- 出版社/メーカー: 洋泉社
- 発売日: 2014/06/02
- メディア: ムック
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三上延、綾辻行人インタヴューと乱歩全小説114作品徹底詳解は、江戸川乱歩への敬愛の念がみなぎる内容となっており、乱歩ファン必携の一冊に仕上がっております。
とくにうれしいのは、これまで刊行された本の表紙の写真が見られること。私が親しんだのは、ポプラ社の児童向け書籍と、青い背表紙でカバー表紙が切り絵だった角川文庫版でしたね。ほかにも、自分が見たことのなかった大昔の本のものも見られて、そこからいろいろ想いが広がっていきます。
乱歩を思うとなぜかまだ小さな子供だった頃の記憶が甦ってくる。小さな子供の頃は外界の見え方が大人になった後とはちがっていて、当時の物の見え方でとらえた記憶の中の像は、いまとなっては異界の光景のようにも思えるのだけれども、でも、それはこの現実と同じ平面上にあるのよね。自分がまだその世界の外側に出ていなかった、自分もその世界の一部だった頃の記憶になるのかもしれません。
大昔、少女マンガ誌「なかよし」で、乱歩の黒蜥蜴をマンガ化したものを読んだのも思い出した。高階良子先生が描いていらした筈。ただし、読んだときはほんとに子供だったので、話はよくわかってなかった気がする。死体の顔をつぶすのが気持ち悪くてそこだけ強烈に印象に残っている。黒蜥蜴は美輪明宏主演の映画もあって、私の脳内では黒蜥蜴=美輪明宏になってますね。三島由紀夫が剥製になって出てましたよね、たしか。
ただ、江戸川乱歩作品は、マンガ化映画化はじつはむずかしいのではないかと思います。文章で読むのがいちばんいいですよ。乱歩の文章はすっきりと端正で目にやさしく古びることがない。
星新一を世に出したのが、江戸川乱歩ではなかったでしょうか。すると乱歩は日本のミステリとSFの創造主に近い存在ということになりますよね。
ミステリやSFがお好きな方は、このムックをぜひ手に取ってもらいたい。作品解説からは発表された当時の雰囲気もうかがえ、風俗史の資料として見てもおもしろいかもしれません。