たたり

DVDで鑑賞。
幽霊屋敷に調査にやってきた人たちが怪奇現象を体験する。
冒頭の題字から、古式ゆかしい怪奇映画の世界が展開して、それだけで楽しくなってきてしまう。古い大きな屋敷で起こった悲劇が年代順に紹介され、現在は幽霊屋敷と噂されるようになり、誰も住んでいないことが説明される。そこへ、人類学者が屋敷で何が起きているのかを調べようと、いわゆる超常現象に対して感度が鋭いと目される女性を連れて泊り込む。
この筋書きからは、後年の映画『ヘルハウス』を思い出すが、『たたり』の舞台となる屋敷はHillhouseという名がついており、『ヘルハウス』はこの先行作品を意識して作られたものと想像する。また、シャーリー・ジャクソンの原作には『シャイニング』を書いたスティーブン・キングが影響を受けたと語っていたのを読んだことがある。
アメリカで幽霊屋敷ものといえば、この『たたり』がまず定番として上がるということになるのか。
人が住んでいない大きな屋敷というのはそれだけで不気味な雰囲気を感じさせるものである。別に大きくなくとも、ましてや幽霊屋敷ではなくても、家というのは人が住んでいないとなぜか荒れるというのもあるし。
ロバート・ワイズといえば、『ウエスト・サイド物語』や『サウンド・オブ・ミュージック』が代表作になるのかもしれないが、ホラーやSFもけっこう撮っている。『オードリー・ローズ』という映画は、『エクソシスト』がヒットした後のホラー・ブームのときに公開されたと記憶するが、アメリカのエリート男がインド帰りの妙な男に妻と娘の信頼を奪われるという、いま思えば当時のアメリカの様子を反映したおはなしになっていたと思う。特殊効果効きまくりのホラー映画とは異質な、舞台劇を思わせる芝居になっており、インド帰りの男をアンソニー・ホプキンスが演じていた。オードリー・ローズをやった女の子の顔が『エコエコアザラク』のマンガに出てくる女の子の顔そっくりに撮られていたのが怖かった。
この『たたり』も、舞台劇風に見えた。登場人物の描き方がすばらしく、こういう芝居を見ると紋切り型のサイコさんをかんたんに出してしまう映画は手抜きよのう、と思ってしまう。
話は飛ぶが、女にとっての幽霊は、男にとっての女に近いものがある。近いものどころかほとんど同じと言ってもいいかもしれない。私は幽霊よりそのことにまったく無頓着な男のほうか一億倍怖いです。