フィアー・ドット・コム

DVDで鑑賞。
"フィアー・ドット・コム" というサイトにアクセスした人が次々に変死する。
冒頭、地下鉄に降りてくる男が脅えて周囲を見回す。彼はおおきな毬で遊ぶ少女の姿を見て、正気を失い、線路に下りて地下鉄に跳ね飛ばされて死亡する。ウド・キアーが天下一品のホラー演技で開幕を飾る場面。
この毬をつく少女の像は、オムニバス『世にも怪奇な物語』に入っていたフェリーニの作品の一場面を思い出させるが、この映画の少女はそれをずっと甘口にした印象。これが映画全体を象徴している。
あるサイトを見た後、48時間以内にある行為を成し遂げないと死ぬ、というのは、日本のホラー映画『リング』を思い出させるし、また別に『リング』に寄らなくても、昔からよくあるパターンのおはなしである。この映画は、そこにもうひとつ、スナッフ映像をインターネットに流している変質者が絡んでくる。それで、幽霊が出てくる幻想的な話と犯人を追っかける話とが混ざり合って、おはなしとしてはどっちつかずでほころびが目立つ結果になってしまっている。
ただし、怪奇映画が好きな私のような者にとっては、絵を観ているだけでわりと楽しめたりもした。事件が起きたアパート、廃墟となった製鉄所、病院の中、廊下やエレベーターなど、舞台となる建物のたたずまい、壁やドアや電灯の色、部屋の調度や雰囲気が、いかにもホラー映画、それもなつかしい少女マンガの怪奇ものを連想させる舞台を見せてくれる。書類や写真、人体標本など、グロテスクな小道具も並び、死体解剖シーンも定番の味わい。死んだドイツ人カップルの残したビデオは、パンクっぽいファッションの二人が目の周りにメイクしてるのかな、大昔のドイツの映画『カリガリ博士』なんかの記憶につながる映像が見えて、この映画のグロテスクにはドイツ趣味が感じられ、しかもほどよく、どぎつくならないようにきれいにまとめられている。
このほどのよさが、ホラーファンでも観る人にとってはぬるいと感じられるかもしれません。話は無理がありすぎるんですが、場面場面の絵はヨーロッパ風な趣味のよさが感じられ、こういうのもいいなと私は思いました。
それにしても、『ゴシカ』もそうだったけど、なんで心霊ホラーと謎解きミステリーを混ぜ合わせるんだろうな、両方面の不自然さが際立って負の結果にしかならないのではないか。でも考えてみると、変質者の犯罪を持ち込むと、強姦や拷問場面が入れられるんですね。だから無理を承知でそれでもやっちゃうのかな。
この映画、音楽が、バイオリンの調べが妙に印象に残りました。グロいけれども美しいを目指した作品だったな、うん。