外国人管理から日本住民皆管理へ? 入管法・入管特例法・住基法

6月28日の日記で、西中誠一郎「数多くのカルデロンさん一家」岩波書店『世界』2009年7月号を取り上げたら、西中氏からコメントをいただき、参議院での審議が始まった、入管法・入管特例法・住基法の改定案についてさらにいろいろと教えてもらえました。ネット上では「保坂展人のどこどこ日記」がくわしく取り上げています。
改定入管法・入管特例法が衆院法務委採決の危機 - 保坂展人のどこどこ日記
保坂氏の記事で説明されている、個人情報の一元管理については、まず外国人に対して試運転してみて、それから全住民に対して行おうとしているのではないかと想像してしまいます。
次に、西中氏のコメントから抜粋します。

昨日も参議院入管法改定案の参考人質疑と、反対の院内集会がありました。今まで院内集会は衆参で6回開催しましたが、参加人数は毎回増えています。しかし参加する国会議員や議員秘書の顔ぶれは、毎回ほぼ決まっています。与党と民主の修正案合意が衆議院で決まってしまったので、2年前に制定された空港での膨大な生体情報の採取・データベース管理システムに基づく出入国管理情報と、今回の在留情報管理システムがネットワーク化されるという、制度設計そのものに対する審議は、ほとんどされていません。
 
 社民党保坂展人議員が指摘しているように、出入国管理情報システムや在留管理システムの制度設計・運用は、アメリカのアクセンチュア社や、IBMなどのグローバルIT企業が請け負っています。小泉政権以降、行財政改革構造改革の名の下に、行政の電子政府化が恐ろしいスピードで推し進められ、その検証もほとんどされないままに、国境を超えた情報管理・監視ネットワーク網が着々と構築されています。

 今回の改定入管法・住基法案だけでなく、臓器移植法改定案やいわゆる海賊法など、住民自治や「人の死」の定義、武力行使を伴う海上自衛隊の海外派兵に関わる重要法案が、十分な審議期間をかけないままに、解散含みの政局の中で次々に決められていきます。裁決直前に駆け込みでマスコミ報道されても問題意識が深まり、広がっていくわけがない。

http://d.hatena.ne.jp/nessko/20090628/p1#c1246599577

住基ネットについては、反対の声も上がっているのですが、個人情報保護法のときと同様に、マスメディアで大きく取り上げられることのないままになっている印象があります。個人情報保護法案反対には、マスメディア上で活躍している言論人、文化人もたくさん参加していたのですが、その割には一般人の注目を広く集めることができませんでした。
早くから監視社会化への警鐘を鳴らしてきた斎藤貴男氏の『不屈のために』(ちくま文庫)から一部引用します。

住基ネットを法制化した改正住民基本台帳法をはじめ盗聴法、周辺事態法、国旗・国歌法などの重要法案が、99年の国会で相次いで可決・成立。今国会までには一連の有事法制教育基本法、また美しいネーミングとは裏腹に言論・表現の統制に通じかねない個人情報保護法案や人権擁護法案など、一歩も二歩も厳しくなった法体系の実現が急がれるに至った。
外国人登録法がようやく排除した指紋押捺制度も、国民総背番号制度の下では国内の全居住者を対象に復活する可能性が高く、戦争のできる国作りが明らかに志向されている昨今では、一気に改憲へとなだれ込んでいく危険もなしとしない。
(引用元:「悪法も法なり」の司法改革 斎藤貴男『不屈のために』ちくま文庫

そして、住基ネット訴訟について。

しかし私は、一人ぼっちではなかったのだと知って、絶望の淵からは救われた気がしている。いまや全国で100人以上に拡大した住基ネット訴訟の原告たちが裁判所に提出した意見書をまとめた冊子が刷り上ったので、一部を要約して紹介したい。
「戦争をしたい人たちにとって、住基ネットはなんと便利で、すばらしいものでしょう。戦争を体験した人が、『これは兵籍簿だ』と感じたという直感を信じます。息子や娘のボーイフレンドの名が載るのももはや現実でしょう」(東京都狛江市)
「シベリアに抑留され強制労働に就かされていた当時、番号で呼ばれていた。自分で自分を管理できない状態になった時、管理する側は番号で呼ぶ。される側は人間性を失う」(和歌山県日高郡
有事法制は『公用令書』(現代の赤紙だ)によって医療、輸送、土木建築関係者、免許を持つ多くの人々を戦争に動員しようとしている。住基ネットの意図するものも透けて見えます」(横浜市
「戦争政策に抵抗する国民を監視するため、戦時中の特高警察のように思想信条に関わる情報を収集し、思想統制に利用される危険性も大いにあります」(石川県金沢市
今からでも遅くない、などという常套句は使いにくい。もう、かなり遅い。だが、あきらめてしまったら破滅しか残らない。
(引用元:人間が番号で呼ばれるとき 斎藤貴男『不屈のために』ちくま文庫

共産党支持者や、反戦運動をしている市民が、マンションのポストにビラを入れて逮捕されたことはまだ記憶に新しい。陸自による国民監視活動もあった。
自衛隊による違憲・違法の国民監視活動を告発する - 日本共産党
選挙も近づき、政治の話題がニュースで取り上げられる時間が増えているように見えますが、自民党内のもめごとや、政策としては不況のせいもあって経済方面の課題が優先的に紹介され、再び戦争ができる国へと向かっているのではないかという危惧は注目される機会が持てないままになっています。
国境を超えた情報管理・監視ネットワーク網というと、グーグルの邪さを自覚できないバカ無邪気な野望を思い出しますが、便利になるんだからそれでいいでしょう? ではすまされない様々な問題があるのだと、政治家がまず言わなければならないのではないでしょうか。人権が脅かされる事態になってからでは遅いのですから。
マスメディアにももっとがんばってもらいたい。