幻に終わったマイケルの "THIS IS IT" のリハーサルを記録したもの。
ダンサーを選び、振り付け師と共に、ショーを組み立てていく様子。マイケルはミュージシャンにも歌ってみせ、身体でリズムを刻んでみせることで、音楽をどうしたいかを伝える。踊りはもちろんだが、マイケルは歌もうまい。声が少年っぽいせいかあまりいわれないけれど、彼の歌にはブルージーな雰囲気がある。
ステージに関わる人たちが、マイケルという偉大な才能に刺激され、触発されて、仕事することを楽しんでいる空気が伝わってくる。
仕掛けや、視覚効果もよく考えられており、お客さんを楽しませるにはどうすればいいか、みんなで知恵を出し合って作っていくところが見られる。
若いダンサーと共に歌い踊るマイケルの姿は活き活きとしており、ステージでいるときがいちばんリラックスできるとかつてインタビューで語っていたことを思い出したりした。
青味がかった照明の下、マイケルの最後の雄姿が鮮やかに浮かび上がる。
この映画を撮影していた人も、まさかこの直後マイケルが急死するとは思いもしなかっただろう。人の想像を超えたところで、奇妙な偶然が起こり、出来上がった映画は、マイケル・ジャクソン追悼のためにあつらえたような作品となった。
でも、マイケル・ジャクソンみたいな大スターには、時々こういうことがあるな、とも思う。マリリン・モンローの未完に終わった最後の出演作は、当時は撮影した映像を見た監督が、マリリンが催眠状態特有の鈍い動きをしているので使えないと判断、マリリン・モンローは途中で降ろされてしまったのだが、映画の中で彼女がヌードになってプールで泳ぐシーンが撮られていた。映画でモンローがヌードになったのはこの時だけである。彼女の死後作られたマリリン・モンローの生涯をまとめたドキュメンタリーでは、そのプールのシーンがよく使われる。死後作られるドキュメンタリーのために撮られたのではないかと思えるほどぴったりとはまる映像になっている。
観られるために生まれてくる人もいるということなのかもしれない。
