シェルブールの雨傘

イオンシネマ宇多津でのキネ旬映画祭で鑑賞。
1957年から1963年までの一組の恋人たちの成り行きを描くミュージカル。
港町シェルブールに住む17歳のジュヌヴィエーヴ(カトリーヌ・ドヌーヴ)は雨傘店を営む母親と二人暮らし。20歳になるギィ(ニーノ・カステルヌオーヴォ)という恋人がいて、二人は結婚しようと話し合っている。しかし母親はまだ若すぎると反対。そんな中、ジュヌヴィエーヴの母親の雨傘店は借金の返済で経営が苦しくなり、ギィは兵役に就かねばならなくなる。ジュヌヴィエーヴはギィの帰りを待つことになったが。……
台詞が全編歌、ミュージカルというよりオペレッタと呼ぶべきか。ミシェル・ルグランの音楽がすばらしい。アメリカのジャズをすっきり洗練させた雰囲気とでもいいましょうか。
冒頭、音楽が流れ出し、雨が降る地方の港町の舗道を傘をさして通る人たちが俯瞰で映し出されるのだけども、古びた石畳の上に開いた色とりどりの雨傘、その色調がフランス映画の色合い。普段はアメリカ映画を観ることが多いせいか、たまにこういうフランス映画を観ると、おフランスえぇなあ、という気分になってしまいます。
テレビでは見たことがあったのですが、今回映画館で観て、あらためて主演のカトリーヌ・ドヌーヴのすごさに感動しました。輝くばかりにきれいなだけではない、演技がとてもしっかりしているんですよ。さすがです。彼女を観るだけでも観る価値有り。
全編流麗な音楽の乗って進んでいくおはなしの方は世知辛いといってもいいくらい現実的。そしてこの映画の味わいはカトリーヌ・ドヌーヴという美人映画スターの持ち味とも重なって見える。
ギィのロッカーの扉の裏にマリリン・モンローのピンナップが貼ってあるのがちらりと見えるのだが、金髪白人美女スターも色々だなあとふと思った。
1957年、恋人に「ぼくは白いガソリンスタンドを建てる」と語ったギィが、6年後その夢を実現するまでの話ともいえる。
多くの映画では劇の背景となるような市井の人々の日々の営みをあえて劇的な音楽に乗せて持ち上げ描いてみた、そんな作品なのかもしれない。上映時間91分。