村上龍「オールド・テロリスト」第十二回 文藝春秋2012年5月号

歌舞伎町の映画館ミラノでテロに遭い、イペリットガスを浴びてしまった関口は、かつて毒ガスの専門家に取材した際に得た知識を頼りに、同様の目にあったマツノ君とカツラギを連れて、着替えを買ってサウナに走り身体を洗う。大規模なテロの後騒乱する街を抜けて、とりあえず関口は疲弊した二人を自分のアパートで休ませる。マツノ君とカツラギは関口のアパートに一泊することになったのだが、夜中、カツラギが急に関口に話しかけてきた。…
今回は、イペリットガスによるテロでパニック状態になった主人公たちの様子が描かれる。混乱した状況、その中で動転しながらも危険を抜け出すべく頭をはたらかし行動しようとする登場人物。村上龍はこういう場面を書くのがうまい。
さて、小説とは話がずれてしまうのだが、村上龍木嶋佳苗をどのように見ているのだろうか。
かつてロス疑惑三浦和義がマスメディアをにぎわしていた頃、村上龍は小説家の見方として、自分の都合で次々と女を乗り換えていくあの三浦さんは狩猟民族としての資質を発揮しているよねと語っていた。世間的にはよくない振る舞いだと見なされているのを承知した上で、作家としてあえて評価してみせる、そういう言い方だったが、小説家はそういうことをメディア上で言ってみせるのも表現活動の内に入るだろう。
次々に男を食う木嶋佳苗も狩猟民族的な側面を持っていると思われるのだが、村上龍はどう評価しているのか。週刊誌では女性文化人に木嶋の印象を言わせているところが多いようだが、村上龍をはじめとして、男性文化人からの意見や感想も聞いて欲しいところだ。