サテリコン

DVDで鑑賞。
古代ローマを舞台に、愛する少年を追いかける若者の体験を描く。
学生エンコルピオは、かつての学友でいまは無頼の徒になったアシルトに、愛する少年ジトーネを奪われる。あきらめきれずにジトーネの後を追うエンコルピオだが、街を巡るうち、詩人から成り上がった貴族の宴会に招かれたり、外国からやってきた人狩りに捕まって異国に連れて行かれたりし、様々な体験をする。
学生とはいえエンコルピオも、いまでいうならリア充な若者。ただし、いっしょに出てくるアシルトがより野獣系のキャラとして描かれているので、相対的に繊細に見える。
この若者二人が主人公のひと夏の青春物語ともいえるが、映画の中では彼らを取り巻く壮年世代の脂ぎった動きが活き活きと描かれ、オジサンオバサンで満ち溢れる世の中だからこそ、若者の言動が青春と呼ばれるに相応しい貴重なうつくしさを時として放つこともあるのを見せてくれる。宴会、荒野、滅びる家、奴隷船、神事、すべての場面が浮世そのものを凝縮したようで、すべてのジャンルの映画を戯画化してつないで流してくれたものを観たような気分になる。
音楽はアジアやアフリカのもの、仏教のマントラや日本の笛の音も聴こえ、劇の世界として作り上げられた古代ローマのイメージと相乗、生きているようなフェリーニ古代ローマがよどみなく流れていく。
古代に描かれた壁画の中から出てきたような人たちがぶつかりあい、すれちがい、ただそこに存在し、野獣のように活力に溢れていたアシルトは死に、風の音、青い空、エンコルピオの金髪が輝いた後、時は過ぎて彼らもまた壁画となっている。ただそれだけのことだが、フェリーニはそれをそのまま肯定しているように見え、陽性で明るい印象で終わる。何度観ても最高。