ダ・ヴィンチ・コード

DVDで鑑賞。
ルーブル美術館の館長が遺した暗号を解読しようとする男女二人が謎の集団に追われる。
ルーブル美術館の館長・ソニエールが殺害される。死体には五芒星が描かれていた。パリで講演中だった米国人教授・ロバート・ラングドントム・ハンクス)は図像にくわしいということから、フランス警察から捜査協力を依頼された。しかし、暗号解読官のソフィー・ヌヴーから、ラングドンは容疑者と見なされおり、逃げなければいけないと告げられる。ソフィーはソニエールの孫娘で、疎遠だった祖父が自分に遺した暗号を解読したがっていた。ラングドンはソフィーと共にフランス警察に追われる身となる。そして、警察とは別の集団もまた彼らを追っていた。キリスト教の歴史が絡んだ謎を解くため、ラングドンはパリ在住の知人の学者にも協力してもらうことにするのだが。……
冒頭、暗い美術館の中で、修道士の衣装をつけた男が館長を秘密を喋れと脅迫したあげく殺害する。殺害現場の周り、絵画の中に生きる人物の動かない目。次に、ラングドンの講演の場面、スライドで映し出される世界各地に残された様々な図像。おなじ図像が見る者の文化背景によっていかに様々に解釈され得るかが説明される。そして、館長を殺害した男がキリスト像の前でくりかえす苦行の光景。
この映画の基調を出だしで見事に印象づけてくれる。伝奇ミステリーとでもいうのだろうか。荒俣宏帝都物語』の楽しさを思い出させるおはなしになっていた。
原作小説は読んでいないが、日本で翻訳が出たとき話題になっていたのは覚えている。大長編だった筈だ。おそらく小説では、暗号解読や、追ってくる謎の集団の背景説明など相当くわしく描かれていたのではないのだろうか。そして、その枝葉を読むのがおもしろかったんじゃないのかな。読んでないまま想像するだけだけれども、映画全体におはなしを進めるのにいっぱいいっぱいなかんじが漂っていて、ひょっとしたらテレビの連続ドラマにでもしたほうが登場人物もそれぞれずっと立体的に描けて深みが増したのかもしれないなと観ていて思った。
ラングドンが事件に巻き込まれるまでの展開が駆け足すぎるし、事件に絡むのがキリスト教の裏歴史(?)ということもあってか、古い教会の中など陰影の濃い空間が舞台になる場面が多く、追っかけやアクションも適度に入っているにもかかわらず、全体に重々しいまんまで話が流れていく。おはなしの題材を考えれば、それがよく雰囲気を出しているともいえるのだけど、ちょっと息苦しく感じました。
うまいなと思ったのは、登場人物の過去の回想や、学者が語る歴史上の出来事が、現在進行中の場面とは異なった色調の映像で描かれており、物語の底流として自然に流れるように挟み込まれていたところ。
おはなしが展開していくにつれて、前半で伏線がちゃんと張られていたのもわかり、謎解きものの楽しさもあります。宗教的な意匠は人によって好き嫌いが分かれるところかもしれない。内容はミステリーといっていいと思うのだが、見た目はオカルト風といえなくもないから。
最後の最後で、ジャン・レノの出だしのひとことが効いてきましたね。