村上龍「オールド・テロリスト」第十三回 文藝春秋2012年6月号

カツラギは自分のおじいさんの知り合いの老人に連絡の電話を入れ、心療内科医のアキヅキが自殺したと知らされる。ついこの間自分を翻弄したアキヅキの突然の訃報は関口にもショックを与える。何が起こったのだ?
関口はカツラギに連れられ、老人宅へ赴く。医療機器につながれた状態の老人は、関口に「あなたのことは調べてある」と言い、カツラギのことを頼む、というのだが。……
いよいよ謎の老人たちのネットワークが見え始め、その背景に満州が浮かび上がってきた。
村上春樹は「1Q84」で、オウムを連想させるカルトを描いたが、この村上龍の数年後の日本を舞台にした小説では、アル・カイーダを思い起こさせるネットワークが登場するようだ。なぜか両村上共に満州を強く意識しているのもおもしろい偶然かな。
村上龍ワールドの主人公になる男は、井戸の底でネジを巻いている男がいるとわかると、その井戸に爆弾を放り込んで退治しようとするような男ばかりなのだが、春樹・龍、両村上が同時代に人気作家でいるというのは何か意味があるのだろうか。片方だけしかいないよりずっといいのはたしかだろうし、私はどちらの小説も楽しんで読んでいるんだけれども、馴染みやすいのは村上龍のほうかな。
アキヅキは何を知ってしまったのだろうか? 次回が待ち遠しい。