平成二十四年度 松竹大歌舞伎

丸亀市民会館にて鑑賞。
はじめに「歌舞伎のみかた」というのがあり、初めて歌舞伎を見る人にもとっかかりやすくなるような手引き。
演目は、芝居が「弁慶上使」、踊りが「手習子」。
「弁慶上使」では弁慶が中村橋之助、卿の君と瓜二つの腰元の母親・おわさが片岡孝太郎。弁慶は衣装かつら化粧ととにかく大きく派手で、今の映画でいうならCG感覚で造形されている。背景になる絵が遠近感を強調して座敷を描いており、その前に立つとさらに大きく見える。しかし、このおはなしの中では、マッチョぶりだけではすまないのだった。
この芝居の実質の主役はおわさだと思う。父親の顔も知らないまま成長した娘のことを案じる母親が、かつて恋にときめいた頃を思い出し、心が娘に戻ってしまう。その間音楽も和風ファンキー調となり、超鬱的状況にもかかわらず瞬間的に女ごころのおかしささえ感じさせ、それだけにその後に続く現実の無慈悲さがやるせない。そして娘のような感情を持ったままの母親をそのまま受け止め肯定する若い娘と話の流れの中で母と娘が役割交換してしまうようなところがあった。自分の中の娘を温存したままの母親はどんなときにも生き生きしているが、娘のまま母の役を引き受けると若い娘は死んでしまう。これってわりと普遍性のある成り行きではないだろうか。
「手習子」は中村児太郎寺子屋から帰ってくる道中で遊ぶ女の子の踊りで、かわいらしかったですよ。
すばらしい生の舞台を見ると、演者からエネルギーをもらえるような気分になります。また来てくださいね。