竹下節子『カルトか宗教か』文春新書 073

カルトか宗教か (文春新書 (073))

カルトか宗教か (文春新書 (073))

目次
はじめに

  1. カルトとは何か?
  2. カモフラージュするカルト - その周辺概念
  3. キリスト教国のカルト事情
  4. カルトの見分け方
  5. 現代カルトの見分け方
  6. 健康カルトについて
  7. 終末論とカルト

おわりに
主要参考文献

1999年に出版された本です。カルトにどう対処すればいいのか、フランスのカルト対策を参考にしながら説いています。カルト、と呼ばれるものがどういうものであるか、どのような種類があるのか、信仰や思想の自由とその活動を社会が許容できるかどうかどう判断すればよいのか。フランスでの取り組みを例にしながら、異なる社会背景をもつフランスと日本を比較することで、日本の傾向をつかみやすく説明してくれています。
カトリックの存在感が濃いフランスと異なり、宗教には関心のない人が多数派になる日本では、宗教について考えたり意見を持ったりすること自体が不得手だったり、信仰を持つ人に対して無理解のままになったり、サブカルチャーとして入ってくる宗教的なものに免疫が乏しい、といった弱点があるのかもしれませんね。
新書で読みやすいので、オウム真理教もそうでしたが、カルトについて知りたい人は読んでみてください。

普通の人間の普通の幸福をささえるような教えに、そんなに革命的なものは出るはずがない。形は違っても、何千年もの間、古代から宗教者が考えつくしているのだ。そして、その他多くの民衆の知恵というものも伝承されている。それなのに、現代社会は情報は一見多いけれど、一人一人の視野狭窄は逆に進んでいる。
(引用元:竹下節子『カルトか宗教か』文春新書 073 p.83)

18世紀末に起こったフランス革命の標語は、フリーメイソンの掲げた「自由、平等、博愛」だった。19世紀はそのうちの「自由」を勝ち取るためにみなが戦い、20世紀は「平等」を得るために努力を重ねた。21世紀はようやく「博愛」をみなが求め始めているといっていい。愛は易しいようで最も難しい。
(引用元:竹下節子『カルトか宗教か』文春新書 073 p.116)

「超能力」とよばれるものは、普通の人が普通の状態ではもっていない異なった能力の発揮のことであるが、これを優越能力であるかのように見なすこと自体に罠がある。
(引用元:竹下節子『カルトか宗教か』文春新書 073 p.136)

現代カルトや健康カルトについては、アメリカ西海岸から流行り始めたニューエイジの影響で出てきたものが多く、日本でも、雑誌の記事や通販の広告などでよく目にするものがあることに気づきます。
ニューエイジについては、この宝島ムックがガイドブックとして見やすいです。