『世界』2024年6月号 久松佳彰「ハイチ 崩壊した統治と深まる複合危機」

 

国際ニュースで見るハイチ情勢に「?」になっている日本人は多いと思われますが、ここにいたるまでのハイチのことが解説されています。必読です。

 ハイチはカリブ海に浮かぶイスパニョーラ島の西側にある、人口約1158万人の国である。1804年、世界で初めて黒人奴隷が自らの力で独立国家を誕生させた歴史をもつが、当時の国際社会からまったく承認されず、旧宗主国フランスからの承認を得るために約100年にわたって多額の賠償および債務を過去の奴隷主や銀行などに支払ってきた。いわば、ハイチは債務という鎖に繋がれて独立したのである。その後、1915~34年には米国の占領を受けた。この「負の遺産」からいまだ自由ではない。これが複合危機の前提としてある。

 その上で危機の第一の要因としては、直近30年間以上、米国政府がハイチに干渉を続けてきたという経緯がある。

(引用元:『世界』2024年6月号 p.198)

くわしくは『世界』6月号で読んでもらいたいですが、フランス革命の波はハイチまで届き、1794年にパリで奴隷制度が公式に廃止されたことを受けて、解放奴隷だったトゥーサン=ルヴェルチュールがリーダーとなって戦い独立を果たしたハイチ。その後の苦難を知ると頭が痛くなってきます。

 そして、現在タリバンが統治するアフガニスタン、国際社会はまずその存在を認めるべきではないのか、と。タリバンだからダメ、とか外から言うのはおかしいのでは。

(先進国が謳う「多様性の尊重」とはいったい何なんでしょうね? 使い勝手のいい呪文?)

 

 『まいにちフランス語』2024年6月号では、応用編「フランコフォニーとは何か」で、ハイチを取り上げています。独立の過程、1960年代のデュバリエ独裁政権から逃れて他国に亡命したハイチ人が各国に作ったハイチ人コミュニティーのこと、など。

 

 

 

Randy Shilts "And The Band Played on” では、1980年代前半のアメリカのハイチ人コミュニティーについて触れられていました。