ポール・クルーグマン「アメリカは、本来のレールからはずれていまっているんです」

『SIGHT』vol.16 2003年夏号の特集は「戦争に勝って、すべてに負けたアメリカ」。イラク戦争後のアメリカをいたずらに巨大視せず等身大でチェックしてみようというもの。経済面では小野善康がどの国でもあるサイクルで好況になったり不況になったりするのが自然な流れですからと語り、アメリカの現在の動きは80年代〜90年代の日本の動きとほとんど重なってると指摘している。ポール・クルーグマンのインタビューも載っていて、クルーグマンブッシュ政権の政策批判やメディアの問題についてもいろいろ言っている。
クルーグマンのインタビューから一部引用。「」内がクルーグマン

つまりブッシュ政権関係者は、はなから冷めているということですか?
「彼らの思考回路を理解するのはむずかしいですけどね。シニカルなのはたしかなんです。ところが一方で、自分たちが理想主義者であると思い込んでいる。おそらく政権内部、あるいはそれに近いところに、福祉国家を捨ててニューディールを復活させようと画策している勢力があるんです。保守的なヘリテージ財団(*米政権に影響力を持つシンクタンク)の主張は興味深いですよ。政府はとにかく中産階級の権利を奪い取りたいんです。医療保険社会保障といったものをね。そしてホワイトハウスにいる連中は、とにかく経済成長によってすべての問題が克服できると信じているんですよ」
(ポール・クルーグマン、『SIGHT』vol.16)

コーポレート・ガバナンスに関してはどの程度深刻なんですか?
「それについては数値を見ればいいと思います。企業の儲けを計る方法は二通りあります。一つは直接、企業が発表する収益報告を見ることですね。そしてもう一つは間接的な方法になりますが、GDPから類推するやり方です。普通は、この二つの数値は同じ動きをとります。しかし、97年頃を境に、分かれはじめたんですよ。GDPを基にした数値が変動しなかったにもかかわらず、企業の収益報告では40パーセントの成長があったことになっています。これは、帳簿の改ざんがあらゆる分野で行なわれていた証拠だと思います。エンロンやワールド・コムほどの規模ではないにしても、似たようなことが多くの企業で行なわれているのは明らかですよ」
(同上)

ついこのあいだまで雑誌でアメリカほめまくってた評論家だかエコノミストだか、あれはなんだったんだろう。クルーグマンの言ってることはちがう、と言う人もいるということか。それはともかく、日本でも帳簿の改竄はいろいろ出てきてる。どこも似たようなものということか。