実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)

DVDで鑑賞。
連合赤軍が追いつめられ、あさま山荘で銃撃戦の末逮捕されるまでを描く。
まず、1960年代の学生運動の経過を当時のニュース映像や写真を用いててきぱきと説明。このあたり、70年代の東映の実録ヤクザ映画、例えば『仁義なき戦い』シリーズと似通ったノリを感じさせる。そして、連合赤軍結成に至るまでの、学生たちの動向が描かれる。重要人物と焦点を絞り、簡潔かつ鮮明に出来事を描写。
デモで知り合い仲良くなる遠山美枝子と重信房子、当初は目立たない存在だった森恒夫が徐々に変わっていく様、滔々と主張を述べ男を圧倒する永田洋子の姿などが紹介される。
銃を手にして革命するしかない、と、一部の学生たちは急進化するが、赤軍は主要メンバーがどんどん逮捕されていき、他の学生運動のグループにも警察の手が伸びる。
残った者たちで結成された連合赤軍は、革命を目指し、銃を手に入れ、山にこもって軍事訓練をすることになるが、それは傍目には警察に追われて世間に居場所を失い山に逃げ込んで行く様にも見える。
俗世間に流されることを拒み、理想の革命戦士になろうという願いを持って集まった若者たちだったが、下界から遮断された山の中、袋小路に追いつめられたような状況の中で、あるべき自分たちの姿から外れてしまっていると見えた仲間を糾弾し、リンチして殺害していくことになる。
自分の不安を打ち消したいがために、弱い者を生け贄していく、そんな光景に私には見えた。
山岳ベースから脱出する者も現れ、山から下りる連合赤軍。雪の中、焚き火を囲んで一服している時、ラジオをつけると、永田洋子森恒夫が逮捕されたというニュースが流れる。なごんだ雰囲気だったのがその途端しんと静まり返った。
子どもだけの時間がついに終わった、それが明らかになった一瞬に見えた。
その後、雪原を荷物を背負って歩いていく一団を、ヘリコプターから警察が見つけ通報、見つかったことに気づいた連合赤軍が逃げる姿が、一面雪で真っ白となった地上に悲しいほど鮮やかに映る。
あさま山荘に侵入してからは、山荘の管理人の妻を人質として立てこもるが、すぐに警察に包囲され、山荘の中に外からの呼びかけが届く。外の世界の大人たちが踏み込んで来るのは時間の問題だ。
銃撃戦は迫力、臨場感があり、盛り上がる。人質となった管理人の妻と連合赤軍メンバーのやりとりも印象深い。
190分という長い時間だったが、ダレることなく映画は進んだ。最後、銃撃戦になるのでカタルシスもあります。美しい山の景色も見られるよ。
あさま山荘での銃撃戦だが、テレビで見た『突入せよ!「あさま山荘」事件』(監督:原田眞人)というのは、警察が主人公で、あさま山荘内の連合赤軍は、警察からすれば姿の見えない、どこから攻撃してくるかわからない敵として描かれていた。この警察主体の映画、佐々淳行の原作が長野県警からクレームがついた物件だったりするので注意が必要なんだけど、見えない敵と戦うアクションものとしてのおもしろさがあった。
今回見た若松孝二の『実録・連合赤軍』は、連合赤軍が主人公、山荘を包囲した警察が、どこから襲ってくるかわからない怪物として描かれていた。
あさま山荘事件が起きた当時、既に私は生まれていたのだがまだ小さかったので、リアルタイムで記憶に残る事件ではなかった。だいぶ後になって本で読んで事件のことを知った。団塊の世代とか全共闘世代とかは反発を感じることが多く、とくに若いときは当時の学生運動に対しても、意地悪な目で見てしまう傾向があったし、じつはいまもある。
でも、自分自身が中年になってこういう映画を見ると、当時の世相の中で若い人、特に多感な学生が、理想を夢見、社会を変えたいと思い、同世代の者たちを意識し、自分も周りにバカにされたくないとか若い時期にありがちな心情にも動かされ、学生運動に参加していくというのは、あの頃だとよくあること、自然なこと、ありがちなことだったんだろうなくらいには思えるようになった。
役者は、永田洋子を演じた並木愛枝が印象に残った。並木が演じた永田洋子からは、生真面目に思いつめることで微妙に歪んでいく現実感覚、永田洋子に対してよく言われてきた単なるブスの妬みでは収まりきらない俗世間への不信と怒り、混濁を混濁と認識できなくなった余裕のなさなどを感じた。坂口弘が去っていくとき見せた表情も秀逸。実在感のある女性として永田洋子を見せてくれたと思う。