リゴレット

真夜中過ぎから雨が降り始めました。大きな雨音、まとまって降ってくれればいいのに。
今日はバーデン市立劇場公演「リゴレット」を観にアルファあなぶきホール香川県県民ホール)へ行きました。二階席から舞台全体を見下ろすように観劇しました。
前奏曲が流れ出し、幕が上がってしばらくはやや暗めの照明の中、衣装をつけた出演者が人形のように静止したままです。陶器でできた人形を並べた小さな家を覗いているようなかんじ。やがて、音楽が変わり、舞台が明るくなると、人形みたいに見えていた人たちが活き活きと動き出します。
おはなしの舞台は16世紀後半のイタリアのマントヴァ、当時の衣装に身を包んだ登場人物が演じる役柄は、いまの日本でも思い当たるような特徴を持ったもので、オペラ的というと私など非日常的な大仰さを連想しがちなのですが、「リゴレット」は歌舞伎的とでも言った方がしっくりくるような、生への執着や、それと地続きの哀しさやりきれなさを結晶化したような作品だと思いました。
オペラ的と歌舞伎的の使い分けは、自分で書いててもなんかあれだなと思うんですが、ヨーロッパの歌劇には軽喜劇みたいなのもいっぱいあるよ、という生半可な知識だけは持っているんですけど、たぶん自分で「オペラ的」という言葉を使うときは、まず頭にワーグナーみたいな大仰なのを思い浮かべてしまいがちなのでしょうね。しかしそんなこというなら、歌舞伎も伝奇ロマン的にどっかいっちゃってるようなのもあるわけなんですが。
歌声はすばらしく、白人が最もエロティックになるジャンルはクラシックなんだなと再認識しました。とくにマントヴァ領公役のテノールはピカピカに響きわたっていた。
舞台のセットも印象深い。冒頭の場面で、ソファの横に果物がいっぱい盛られた大きなかごが置いてあるんだけど、それだけで宮廷内の贅沢で放蕩的な雰囲気が出てくるんですよ。おもしろいですよね。