変態男

  • 2005年、ベルギー・フランス
  • 原題:Ordinary Man
  • 監督・脚本:ヴィンセント・ラノー
  • 出演:カルロ・フェランテ、クリスティーン・グルロワ、ステファン・リベルスキー

DVDで鑑賞。
アベックとトラブルになり男を殺してしまった男が、残った女を監禁する。
これはサスペンス風のコメディのような心理劇だった。『変態男』という邦題のせいか、お店では『変態村』と並んでホラーのコーナーに置かれていたが、それはまずいんじゃないの。かといって、んじゃどこ置けばいいんすかとたずねられても困るけど。あの店の分類なら、珍味なコメディ、犯罪が主軸になってるからサスペンス、とでもしたほうが。ホラー期待して借りた人はがっかりするかもしれませんから。
主人公の幻覚に死んだ男が登場する場面はある。また場面によってはグロい血糊も見られる。しかし、これは、妻との関係が悪化し悩む男が、苛立ちからトラブルに巻き込まれ殺人を犯し、事件を知る女を監禁しながらこの先どうしたもんかともやもやしている話。そして、小心さからその場その場をなんとかとりつくろおうとバタバタするのが陰惨なんだが傍から見てるとなにかおかしい、そういう映画だから。
ベルギーだかフランスだか、見ていると心和むような田舎の風景、青い空に白い月、雲の流れる中昇る朝日、重たい雲がゆっくりと流れる冬の空。美しい自然を背景に、ふつうの男のずんどこな日常が続きます。
そう、この映画、終わりなき日常がどどんと中心を流れている。監禁女を隠すのに疲れた男が夜に見る幻想は、しあわせそうな様々な家庭の光景。平凡な家庭の団欒として誰もが思い浮かべるもの、でも、平凡なふつうの男の筈なのに主人公の平凡な日常にはないもの。
こんな日常じゃなくて、もう少しちがったマシな日常が欲しいんだ。ふつうの男や女がふつうに持ってておかしくないささやかな欲望。各人のそんな思いが絡み合いながら終わりなき日常は容赦なく流れていってしまうのでした。日常ほどホラーなものはないのかもしれないですね。あ、だったらホラーでOK、かな?
『変態男』は『変態村』と同様、KingrecordsからのDVD。
http://www.kingrecords.co.jp/visualpack/youga/index.html
「ホラー秘宝」と銘打って、なかなかいいかんじのラインナップで来てますね。旧作のDVD、うれしい作品があるじゃないですか。
また、『変人村』『変態男』『変態ピエロ』『変態BOX』『変態村』『屋敷女』と、腹をくくった邦題が並んでいるのも、期待が持てる。人によって好き嫌いは分かれるだろうが、私は支持する。
ま、この『変態男』については、もっとふさわしい邦題がなかったかという気がしないでもない。しかし私は『変態男』というきっぱりした題名に引き寄せられて観てしまったので、わたくし的には無問題。こういうへんなおはなし好きだし。でも、変態期待して観た人は肩透かし喰らうかも。そういうだまされる楽しさも映画観る内だと私なんかは思ってしまうのだが、もちろんそうでない人だっているだろうしね。昔の洋画は、邦題がうまいよね。あのうまさをもう一度味わいたい、というのもあるな。