嫌われ松子の一生

DVDで鑑賞。
孤独に死んだ川尻松子という女性の一生を描く。
東京で独り暮らしをしていた川尻松子という女性が公園で死んでいるのを発見される。アパートの後始末をまかされた松子の甥が彼女の生涯に興味を持つ。
中学校の先生をしていた松子だが、対人不器用のため誤解され、緊張状態になるとひょっとこ顔になるという癖が災いして教師をクビになってしまう。家族とも気持ちの行き違いが重なり家出、その後どんな変転を辿ったか。40-50年代のハリウッドのカラー映画を思い出させる幕開けから始まって、昔の映画のパロディ風な芝居や、ミュージカルみたいになったりしながら、波乱万丈だった松子の生涯が再現される。
松子当人がその当時を思い出しながら脳裏に記憶の映像を再現しているようなかんじかな、松子の心境が記憶に色づけを施して劇化されているような情景が続く。悲惨な状況もコメディタッチで描かれていたりするが、中谷美紀はこういうのうまいですよね。不器用な人間のけなげさ、かわいらしさを、おかしな中に見せてくれる。子どもみたいなまじめさが大人だらけの現実の中ですべり続けるような純心な不幸とでもいうんですか。
次々にカラフルな場面が展開し、中谷美紀オンステージといった感もありました。
この映画、場面、場面で花や草が印象に残りますね。庭、道端、野原、川辺、部屋や窓に飾られた花、柱に伝う蔦など、様々な花の色、草葉の緑が妙に生々しく、静かだけど生きている、そんな気配が伝わってくるようで、孤独な松子を拒絶することなく生きる草や花がいつも彼女を取り巻いている。ときには松子の気持ちを反映するかのように見えることもあるけれど、本来は人の事情などとは無関係にうつくしい、静かで強くて無慈悲で寛容な、花や緑。