プレシャス

DVDで鑑賞。
父親に強姦され出産した16歳の少女が生きようとする話。
1987年、ニューヨークのハーレム。プレシャスは数学が好きな中学生だがクラスではひとことも喋らす、二人目の子供を妊娠中だった。父親に強姦された結果だ。母親はプレシャスのせいで夫と別れる破目になったと娘につらく当たる。中学の校長は、プレシャスが学業を続けるために代替学校“イーチ・ワン・ティーチ・ワン”を紹介してくれる。プレシャスはそこで読み書きを習い、先生や級友とも仲良くなっていくが、母親との間は険悪になるばかり。プレシャスは二人の子供と共に生きていく道を模索する。
プレシャスは傷つけられたり落ち込んだりしそうになると、一瞬頭の中に幻想が広がる。それはとても通俗的な夢、そんな妄想力をあたりまえに持ち合わせているプレシャスの健康さと愛嬌を感じさせるおかしさと同時に、彼女の直面している現実との落差からいがらっぽいものが伝わってきてしまう。そして彼女の脳内には、かつて強姦された時の記憶がひらめくこともあるのだ。
無愛想で無口なプレシャスだが根は向日性に見える。だからか、醒めてはいても暗く淀んだりはしないですんでいるような印象を受ける。
代替学校ではいい先生にめぐまれ、ケンカしたりしながらもクラスメイトと友だちづきあいをするようになる主人公だが、母親との関係はこじれ、福祉の担当員にも自分の気持ちをうまく伝えることができない。読み書きの勉強の成果がぐんぐん出てきているプレシャスは、劇中で数字には強いところも見せ、高校、大学へと進学する夢を抱く。そして子供二人と共に希望を持って歩いてく姿で物語は終わるのだが、一見すると若い母親が小さな子供を連れて歩いている平和な光景がじつはそのままリアル「ロード・トゥ・パーディション」でもある、というのがこの映画の重さだろう。それでも、プレシャスが意志を持って生きようとしはじめているから、明るいのだが。
母親のところを追い出されたプレシャスを助けてくれる代替学校の先生はレズビアンだが、アメリカ映画では娯楽作品にも時々レズビアンが出てくる。「サバイバル・オブ・ザ・デッド」では州兵チームの紅一点がレズビアンだったし、「ダウト 偽りの代償」では恋人を救おうと奔走する女性を手助けする友だちがレズビアン。日本にくらべると、同性愛者が現実にいる人として映画に登場する頻度は高いように見えるのだけど、どうなんでしょう。