「フジテレビはタレントを消耗品と見る点で徹底している」

フジテレビについてのメモとして、小林信彦『日本人は笑わない』(新潮文庫ISBN:4101158339小林信彦の評を引用。
(注意:この『日本人は笑わない』は絶版。2005年に改題されて小林信彦『東京散歩 昭和幻想』(知恵の森文庫)ISBN:4334783449。)

1970年代は、<笑い> の幼児化が始まった時代です。ドラマで知られたTBSがドリフターズ(元はコミックバンド)を使って、視聴率の高いお化け番組を作ったのが、その象徴です。ドリフターズは、こうして <お子様向けのグループタレント> に変身します。<フジテレビは、タレントを消耗品と見る点において、もっとも徹底した局である> と、当時、ぼくは、「日本の喜劇人」に書いています。
フジテレビで使いつぶされたコント55号萩本欽一坂上二郎)のうち、萩本欽一は逆襲に出て、テレビ朝日の一時間を使って、自分が演出・主演する番組を作ります。
この独創は驚くべきものですが、マイナス面もあります。フジテレビがこの <スタジオをタレントに明け渡す> 方式を実行すれば、タモリビートたけし、さらには関西の若い漫才師たちを消耗品として使いすてる形になるわけです。
この形は1980年代から現在までつづいており、他局もそれを真似ているのです。
(引用元:小林信彦「日本人は笑わない1」1997年文庫版書下ろし 『日本人は笑わない』新潮文庫

小林信彦は私の親と同世代。氏が「お子様向け」というドリフターズの番組は、小学生だった私が夢中で見ていたもので、私からするとドリフターズは子どもの頃から好きだったグループになるのだが、小林信彦からすると、お子様向けばかりになって大人が楽しめるものがなくなった苦々しい象徴になるようだ。
ところで、フジテレビが漫才ブームの勢いに乗ってはじめた「オレたちひょうきん族」は、ドリフターズのお化け番組「8時だヨ! 全員集合」の裏番組だった。お化け番組と呼ばれるほど人気のあったドリフに対抗して、「全員集合より視聴率を取った! やった!」とはしゃいでいたあたりまでは、まだフジテレビは傍流、異端のおもしろさがあったのかもしれない。
しかしその後、「ひょうきん族」がモンスター化してしまった。異端が異端でなくなり、傍流が主流化して、他の局も真似しだして、観る側も巻き込んでわけわからなくなっていった、ということか。
小林信彦の批評からすると、フジテレビはタレントを消耗品として使い捨てるやり方の本家と見られる。すると、漫才ブームで出てきた芸人と同様、韓流も、フジテレビにとっては消耗品でしかないんでしょうね。
ネット発フジテレビ抗議デモのきっかけとなったのは、高岡蒼甫のツイートだったのだが、高岡蒼甫の立場にしてみれば、韓流で枠を埋められると、自分の仕事する場が減るという危惧があってもおかしくないよね。でも、消耗品として使い捨てるのが本領のテレビ局には、作り手を育てるということができないのかもしれず、育てるなんてめんどくさいことをするより、手頃な値段で買える外国製品を消耗したほうがいい、そういうのもフジテレビ韓流ごり押しにはあるのかもしれない。